学生の頃買い求めたマルチカバーは、今でも大切に保管している。
たぶんこれはインド更紗なのだと思う。
イランにはペルシア更紗というものもあって、これはイラン語で「ガラムカール」と呼ばれる。
どちらの更紗も手作業でスタンプを押しながら布を染め上げているから、カラフルでエキゾチックだ。
独特の染料の匂いも、異国の匂い。
200×200cmの正方形の中に、曼陀羅のように描きこまれた象徴たち。
贅を凝らして飾られた象、クジャクの模様はインドやタイで好まれた柄。
ペイズリーはペルシアから西の諸国に好まれた柄。
そして
花唐草は西はイギリス、東は日本まで伝来した柄。
なんでもない布の柄には、西と東をつないだ世界の歴史が詰まっている。
1枚の大きな布は、何かと使い道が多い。
市販のカーテンピンチを使ってカーテン代わりに使っても良いし、ソファやこたつに掛けて使ってもオシャレだと思う。
私は昔、白い壁・レンガ色のカーテンのシンプルな寝室でベッドカバーとして使っていました。
フワフワしたやわらかなトーンの部屋に黒い柄もののファブリックを取り入れるとピリッとしたスパイスになって、部屋の雰囲気はガラリと変わるから面白い。
今でもとても気に入っているけれど、結婚した後は使う機会もないままに、ずっと衣装ケースにしまいっぱなし。
年に1、2回取り出して、大きく広げてスパイシーな柄を眺めては、また畳んで大切にしまい込むのです。
布を広げると、ネコが「ボクのベッドに敷いてもらえるのかな?」と覗きに来るのだけど、これは大切な布だからネコさんには我慢してもらおうと思う。
この布は、少し個性が強い。
洗うと染料が落ちやすいし、濡れると色うつりする。しかも日に当たると色が褪せやすい。
だから洗濯の際に少し気を遣うのだけど、そんな大陸的な仕様も異国の布の魅力なのです。
毎日の暮らしの中で使うなら、布が厚手でしっかりしているペルシア更紗がお薦め。
ペイズリーは何年使っても飽きない永遠の古典柄。
渋い赤茶色はアナトリアの大地の色、ブルーは砂漠の中のモスクとオアシスの色。
布1枚から、心は世界に飛び立ちます。